私の人生において唯一のお見合いは、
某ホテルの料亭の個室にてだった。

最初からノリ気ではなかったが、
「私の人生、一度くらいはお見合いしてみてもいいんじゃね？」
という思いと美味しいお食事も食べられるとあって、ぼちぼち気分でお見合いに臨んだ。

相手は口ベタな方だったので、
これじゃ話が進まないと“編集者魂”がムクムクと沸き上がり、
私はまるで取材するかの如く、話を進めた。

しかし、これが間違いだった。
相手は、会話がスムーズに流れている、または話が合うと勘違いし、
後日「もう一度お会いしたいです」と言ってきた。

でも、すでにお見合い当日、「いや、それじゃだめだ」という決定的なことが私の中では起きていた。
私がお手洗いへと席をはずし戻ってくると、相手はたばこを吸っていた。

そして、私の姿が見えると、慌ててたばこをもみ消した。

私は「どうぞ、吸ってください。好きなものを我慢しなくてもいいですよ～」とさらっと伝えた。
だって、そうだから。
たばこを吸うことは彼の日常だ。

結婚生活も日常だ。
だからお見合いでもできるだけ、日常の部分を見せることが大事だと
たった一度のお見合いで強く感じた。

お見合いは良いところばかりを見せ合うとロクなことにはならない。

お見合いで好感触だった二人がそのあとお付き合いしたとしても
前述のようなことが起こり、
「たばこはちょっと～」ということで破談になるということも十分ありえる。

私もたばこは苦手だが、
あの場で「たばこを吸ってもいいですか？」と問われたほうがよほどよかった。

こういうことは何もお見合いに限ったことではなく、
ビジネスマッチングという場合にもあてはまると思う。

自分をよく見せようとやっきにならないことが肝要。

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